- 「遺留分ってなに?」と悩んでいる人
- 遺留分について基本的なことを知りたい人
- 相続人の範囲や割合や計算方法などを知り人
「遺留分って難しそう」と思っていませんか?遺留分についてを簡単に解説させて頂きます。
相続作業が発生して初めて遺留分という言葉を聞いた人が多いと思います。今日は、そんな方に、遺留分についてを分かりやすいく丁寧に解説します。
この記事を読んで頂ければ、遺留分についての基本的な知識が身に付きます。
遺留分とは?相続における基本知識
遺留分の定義とその重要性
遺留分とは、簡単にいうと法定相続人が最低限保障される遺産の取り分です。
遺言書によって特定の相続人に遺産が渡される場合でも、相続人のうち、亡くなった方(被相続人)の一定の近親者(兄弟姉妹以外の法定相続人)には「私にはこれ位の割合の財産はもらうことが出来る」と主張することができます。
本来、自分の財産を、どのように処分してもその人の自由です。 しかし、ある人が亡くなったときに妻や子など、その人に近い近親者は遺産を一定割合をもらえると期待することがあります。また、家族で会社やお店を経営していた場合、身内には潜在的な持分があるということができるケースもあります。
そこで、近親者が、自分の期待とは違う遺贈や相続の指定について意見を言うことができるようにと法律に遺留分という概念を設けました。
遺留分のポイント
遺留分は、遺言書が存在することで発生する権利です。 あくまで権利であるため、それを主張するか、主張しないか、権利を有する人が選択することが出来ます。
遺留分のポイントは下記の通りです。
- 遺留分は原則、法定相続分の1/2しか主張することが出来ない
- 直系尊属(父母や祖父母など、自分より上の世代の直系親族)のみが相続人である場合は法定相続分の3/1
- 遺言書があることを知った日から、1年間で効力がなくなってしまう
- 兄弟姉妹には遺留分が無い
また2019年7月より遺留分については金銭で行うこととなったため、不動産や自社株など換金しづらい資産の割合が多い場合は、この遺留分が現金で確保できないという状況も発生します。 遺言書を作成するときは、常にこの遺留分について注意を払う必要があります。
遺留分の割合と計算方法
法定相続分と遺留分の違い
相続される順番によって、法定相続分と遺留分は異なります。法定相続分とは遺言がない場合に民法の規定によって分けられる相続人の取り分のことであり、遺留分とは、遺言書があっても相続が発生した際に相続人が最低限確保を主張できる取り分のことです。次からは具体的なケースで考えていきます。
相続順位の基本
相続される順番は次のように決まっています。
配偶者はいつも相続人になることができ、順位は以下の通りです。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。 ですから、子どもがいない夫婦では、夫の兄弟姉妹との相続で争いが生じないように「全財産を妻に相続させる」などの遺言書を作成することが大切です。
- 配偶者は常に相続人になることができる。
- 相続の第一順位は子、子の代襲相続人(相続予定者(子)が死亡している場合の孫など)
- 相続の第二順位は直系尊属(親など、家系図の上に登っていくイメージです)
- 相続の第三順位は兄弟姉妹、兄弟姉妹の代襲相続人(兄弟姉妹の子どもまで)
以下は具体的なケースの法定相続人と遺留分などを見ていきます。
ここで遺留ぶんのポイントを再度、整理します。
- 遺留分はあくまでも法定相続分の半分しか主張することが出来ない
- 遺言書があることを知った日から、1年間で効力がなくなってしまう
- 兄弟姉妹には遺留分が無い
ケース①:配偶者と子(直系卑属)の遺留分
相続人 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|
配偶者 | 1/2 | 法定相続分×1/2=1/4 |
子(長男) | 1/2×1/2=1/4 | 法定相続分×1/2=1/8 |
子(長女) | 1/2×1/2=1/4 | 法定相続分×1/2=1/8 |
ケース②:配偶者と子(直系卑属)と孫(代襲相続人)の遺留分
相続人 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|
配偶者 | 1/2 | 法定相続分×1/2=1/4 |
子(長男) | 1/2×1/2=1/4 | 法定相続分×1/2=1/8 |
孫a(代襲相続人) | 1/2×1/2×1/2=1/8 | 法定相続分×1/2=1/16 |
孫b(代襲相続人) | 1/2×1/2×1/2=1/8 | 法定相続分×1/2=1/16 |
ケース③:配偶者と親(直径尊属)の遺留分
相続人 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|
配偶者 | 2/3 | 法定相続分×1/2=1/3(2/6) |
父 | 1/3×1/2=1/6 | 法定相続分×1/2=1/12 |
母 | 1/3×1/2=1/6 | 法定相続分×1/2=1/12 |
ケース④:配偶者と兄弟姉妹の遺留分
相続人 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|
配偶者 | 3/4 | 法定相続分×1/2=3/8 |
兄 | 1/4×1/2=1/8 | 法定相続分×0=0 |
姉 | 1/4×1/2=1/8 | 法定相続分×0=0 |
ケース④の場合ですが、ポイントの通り兄弟姉妹には遺留分はありません。なので、お子さんがいない夫婦では、例えば「全財産を妻に相続させる」との遺言書を作成しても、兄弟姉妹は遺留分を主張することが出来ません。
遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ
旧民法と現行民法
2019年6月30日以前に被相続人が死亡した場合は遺留分減殺請求を行うことができ、2019年7月1日以降に被相続人が死亡した場合は遺留分侵害額請求を行うことができます。大きな分け方として、「遺留分減殺請求」は旧民法の制度、「遺留分侵害額請求」は現行民法での制度と言えます。
遺留分減殺請求の問題点
遺留分減殺請求は、少しややこしいですが物権的効力を有しています。物権的効力とは以下の様なものです。
物権には「排他性」があり「一物一権主義」と言って、1つの物について、同じ内容の物権は1つしか成立しません。例えば、ある車1台に対して、所有権は1つしか成立しないため、車の所有者も基本的に1人となります。
その為、たとえば遺言書にある土地を長男に渡すと記載されていても、物権的効力をゆうする遺留分減殺請求ができる次男がその請求権を行使すると、その不動産が長男と次男の共有物となり、結果的に遺言者の意思が反映されないなどの問題が生じました。
こうした共有関係に関する問題が、遺留分減殺請求(旧制度)を遺留分侵害額請求(新制度)に改める大きな理由の一つとなりました。
遺留分侵害額請求権
「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」に変更された大きなポイントは、財産を共有する代わりに、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができるようになった点です。
遺留分侵害額請求権の事例
遺留分減殺請求は物権的請求権で財産そのものを取り戻す請求であるのに対して、遺留分侵害額請求は代わりに金銭の支払いを求める請求である点が違います。
以下のケース①を用いて、両者の違いを解説します。
相続人 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|
配偶者 | 1/2 | 法定相続分×1/2=1/4 |
子(長男) | 1/2×1/2=1/4 | 法定相続分×1/2=1/8 |
子(長女) | 1/2×1/2=1/4 | 法定相続分×1/2=1/8 |
- ある男性(被相続人)が亡くなる。
- 相続開始時において時価1000万円の不動産と、預貯金1400万円の合計の2400万円の遺産があった。ほかの遺産や生前贈与はないとする。
- 遺言に基づいて、配偶者は、遺産総額の1/2の現金1200万円を相続。
- 長男が不動産(1000万円)を相続。
- 長女が残りの預貯金(200万円)を相続。
- 配偶者の遺留分は600万円。長男と長女の遺留分額はいずれも300万円。
- 長女は預貯金200万円しか相続できていないため、100万円分の遺留分侵害が発生しています。
遺留分減殺請求の場合
長女が長男の相続した不動産について、遺留分減殺請求を行うとします。長女は母と長男い対して請求することができ、母と長男はそれぞれの割合に対して、遺留分を支払う義務があります。母の場合は金銭のため、一定の割合を支払えば済みますが、長男の場合は、不動産のため、長女は不動産に対して一定の割合を共有することになります。
遺留分侵害額請求の場合
これに対して遺留分侵害額請求は、遺留分額と実際に相続した額の差額について、金銭で支払うことを請求することができます。上記の事例の場合、母と長男ともに、遺留分を金銭で払えば法律上は問題ありません。長男が相続した不動産についても、長女との共有にならず、長男が所有権を持ったままです。
この様に、遺留分侵害額請求は金銭で遺留分の精算が行われるため、トラブルの基になりやすい不動産などの共有関係が発生せず、スムーズな相続手続を行う観点からも非常にメリットがあります。
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