2024年(令和6年)に処遇改善加算が変わると聞いたけど
どこが、どう変わるのかを良いか教えてほしいな。
そんな疑問に答えます。
- 福祉歴約20年の行政書士・社会福祉士・公認心理師
- 福祉施設・行政機関で相談経験多数
お役に立てば幸いです。
処遇改善加算はどう変わるの?
結論新しく「福祉・介護職員等処遇改善加算」になります
これまでと、どこが違うの?
現行の「処遇改善加算」・「特定処遇改善加算」・「ベースアップ等支援加算」が一本化されます。
令和6(2024)年度の報酬改定において処遇改善加算に大きな変更が行われます。
具体的に、現在は以下の3つの加算があります。
【旧加算体系(令和6(2024)年度5月まで)】
①「福祉・介護職員処遇改善加算」
②「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」
③「福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算」
その3つが、支給要件の再編・統合&加算率の引き上げなどがされた上で一本化されます。
【一本化後(令和6(2024)年度6月から)】
新設:「福祉・介護職員等処遇改善加算」
厚生労働省の解説動画
介護職員等処遇改善加算のご案内(令和6年度版)
介護職員等処遇改善加算等 令和6年度の計画書の記入方法について(新規算定事業所向け・別紙様式6)
介護職員等処遇改善加算等 令和6年度の計画書の記入方法について(一般事業者向け・別紙様式2)
なぜ「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化されるの?
なぜ「福祉・介護職員処遇改善加算」に一本化されるのかをご説明します。
現行の「処遇改善加算」・「特定処遇改善加算」・「ベースアップ等支援加算」の複雑さ等が原因
厚生労働省は2023年5月に、障害福祉施設における処遇改善加算の最新の取得率を公表しました。
それによると、旧体系の処遇改善加算の取得率は以下の通りとなります。
年度 | H30 | R1 | R2 | R3 | R4 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
サービス提供月 | 4月 | 10月 | 4月 | 10月 | 4月 | 10月 | 4月 | 10月 | 4月 | 10月 |
処遇改善加算 | 79.2% | 79.8% | 81.1% | 81.8% | 82.8% | 83.1% | 84.0% | 84.4% | 85.3% | 86.0% |
1特定処遇改善加算 | 40.4% (33.1%) | 54.9% (45.5%) | 56.4% (46.9%) | 60.3% (50.7%) | 60.7% (51.3%) | 62.9% (53.6%) | 63.6% (54.7%) | |||
2ベースアップ等支援加算 | 63.5% (54.6%) 3 |
この表から分かる通り、全ての事業所が処遇改善加算を取得しているわけではありません。
特に、処遇改善特別加算の取得率は、計画書の作成や実績報告書の作成の複雑さから取得率が低くなっています。
つまり、本来なら加算をしっかりと取得できるのに、制度の難しさから加算を取得しない事業所が多くなっている状況です。
この様な解決するために、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等改善加算の3つの加算が一本化されました。
厚生労働省の資料などには、処遇改善加算を一本化する理由に以下の3つの観点が挙げられています。
①事業者の賃金改善や申請に係る事業負担を軽減する観点
②利用者にとって分かりやすい制度とし、利用者負担の理解を得やすくする観点
③事業所全体として柔軟な事業所運営を可能とする観点
以上のような理由から「福祉・介護職員等処遇改善加算」へ一本化されます。
いつから現行制度から一本化後の「福祉・介護職員等処遇改善加算」へ移行されるの?
それではいったい、いつから一本化された処遇改善加算に移行できるの?
厚生労働省の資料を見ながらご説明いたします。
これは厚生労働省の障害福祉の処遇改善についてのHP内にある、「制度概要・全体説明資料」という資料内の図の一部です。
この図をもとにご説明いたします。
「福祉・介護職員等処遇改善加算」への移行時期
まず、大前提として令和6(2024)年度5月までは、現行の3制度での計算となります。
その後は主に以下の3つのルートになります。
上記の図の赤文字の部分を参考に説明していきます。
①新加算の要件をすぐに満たす場合
(令和6(2024)年度6月~令和7(2025)年度3月まで)
この場合は、すぐに新加算Ⅰ~Ⅳへの移行となります。特に何の問題もありません。
(※詳しい要件などは、この先ご説明していきます。)
②新加算の要件を満たせない場合
(令和6(2024)年度6月~令和7(2025)年度3月まで)
この場合は、少し複雑です。新加算の要件を満たせない場合は、経過措置として、現行3加算の取得状況に基づく加算率を維持したうえで、新加算のⅤ(1~14まである)を設けて、今回の改定による加算率の引き上げを受けることができます。
③上記の①②が新制度へ合流
(令和7(2025)年度4月~)
上記①②のスケジュールを経たうえで、令和7(2025)年度4月より、「福祉・介護職員等処遇改善加算」が完全施行となります。
一本化される「福祉・介護職員等処遇改善加算」を算定するためにはどんな要件が必要?
具体的にどうやったら「福祉・介護職員等処遇改善加算」をもらえるの?
今回、一本化される「福祉・介護職員等処遇改善加算」の要件をご説明します。
「福祉・介護職員等処遇改善加算」の要件は以下の3種類です。
1.キャリアパス要件
2.月額賃金改善要件
3.職場環境等要件
順番に解説していきます。
1.キャリアパス要件
要件名 | 内容 | 説明・具体例 | 対応新加算 | 備考 |
---|---|---|---|---|
キャリアパス要件Ⅰ | 任用要件・賃金体系 | 福祉・介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する。 | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ | R6年度中は年度内の対応の誓約で可 |
キャリアパス要件Ⅱ | 研修の実施 | 福祉・介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保する。 (a 研修機会の提供又は技術指導等の実施、福祉・介護職員の能力評価 b 資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等)) | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ | |
キャリアパス要件Ⅲ | 昇給の仕組み | 福祉・介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する。 a 経験に応じて昇給する仕組み b 資格等に応じて昇給する仕組み c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定 する仕組み | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ | |
キャリアパス要件Ⅳ | 改善後の賃金額 | 経験・技能のある障害福祉人材のうち1人 以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万 円以上であること。 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは、適用が免除されます。 | Ⅰ・Ⅱ | R6年度中は月額8万円の改善でも可 |
キャリアパス要件Ⅴ | 介護福祉士等の配置 | 福祉・専門職員配置等加算等の届出を行っていること。 | Ⅰ |
2.月額賃金改善要件
要件名 | 内容 | 説明・具体例 | 対応新加算 | 備考 |
---|---|---|---|---|
月額賃金改善要件Ⅰ | 新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給又は決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる。 | 現在、加算による賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給・毎月の手当に付け替える対応が必要になる場合があります。(賃金総額は一定のままで可) | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ | 2025(令和7年度)から適用 |
月額賃金改善要件Ⅱ | 前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行う。 | 新加算Ⅰ~Ⅳへの移行に伴い、現行ベア加算相当が新たに増える場合、新たに増えた加算額の3分の2以上、基本給・毎月の手当の新たな引上げを行う必要があります。 | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ | 現行ベア加算未算定の場合のみ適用 |
3.職場環境等要件
要件名 | 内容 | 説明・具体例 | 対応新加算 |
---|---|---|---|
職場環境等要件 | 6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表する。 | R6年度中は6つの区分から3つを選択し、それぞれで1以上、取組の具体的な内容の公表は不要 | Ⅰ・Ⅱ |
6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。 | R6年度中は全体で1以上 | Ⅲ・Ⅳ |
※具体的な職番環境の要件については追って加筆していきます。
「福祉・介護職員等処遇改善加算」の要件まとめ
要件の区分 | 要件名 | 新加算Ⅰ | 新加算Ⅱ | 新加算Ⅲ | 新加算Ⅳ |
---|---|---|---|---|---|
キャリアパス要件 | キャリアパス要件Ⅰ | ||||
キャリアパス要件Ⅱ | |||||
キャリアパス要件Ⅲ | |||||
キャリアパス要件Ⅳ | |||||
キャリアパス要件Ⅴ | |||||
月額賃金改善要件 | 月額賃金改善要件Ⅰ | ||||
月額賃金改善要件Ⅱ | |||||
職場環境等要件 | 職場環境等要件 (R6年度中は6つの区分から3つを選択し、 それぞれで1以上、取組) | ||||
職場環境等要件 (R6年度中は全体で1以上) |
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